Japan Times」2003年5月20日 3面
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<抄訳>
お決まりのお題目だけでなく、スローガンを叫びながら
一水会の親分は世界的な新右翼を模索する

【大阪発】彼はアメリカの「覇権」を批判し、右翼の指導者たちの国際的な同盟関係を模索し、皇室が京都に帰還してほしいと語る。

木村三浩氏は、日本の右翼運動の中で、おそらく最も著名な人物の一人である。

 四十七歳の木村氏は、東京に本拠をおく「新右翼」グループの一つ「一水会」の代表である。一水会は、一九七〇年に自衛隊幹部らにクーデターを起こすよう教唆し、それに失敗したのち自害した小説家の三島由紀夫氏に感銘を受け、三十年前に結成された。

 一九八一年に一水会に参加し、二〇〇〇年に代表となった木村氏は、他の伝統的な右翼団体のメンバーとは異なり、自らを、いわゆる国際主義者と考えている。

 名門の慶應大学を卒業し、流暢な英語を話す木村氏は、国際的な右翼グループなどとの連携を作り上げようとしている。そして、フランスの右翼指導者ジャンマリー・ルペン氏や、最近退陣させられたサダム・フセイン大統領の息子ウダイ・サダム・フセイン氏を友人とみなしている。木村はこれまでに十二回イラクを訪問したという。

 木村氏は、フセイン大統領からの「プレゼント」だという腕時計や、ウダイ氏と一緒に写っている写真を誇らしげに見せながら、先のアメリカ主導のイラク侵略に対抗するため三月初旬に本を出版したことについて、何ら後悔はない、と言い切る。

最近、大阪に出かけた木村氏は、「アメリカは、イラクが大量破壊兵器を持っているから攻撃するのだと言っていた。しかし、そのような兵器は未だに発見されていない。イラクへの戦争は、国際法上では違法な侵略にあたる」と語った。

三月下旬には、一水会が支持するルペン氏に会うため、木村氏はフランスへ旅した。木村氏によると、

「ルペン氏は、日本の厳しい移民法を称賛し、不法就労者の流れをコントロールするためには、フランスにも同様のものが必要だと私に語った」という。

 専従メンバーはわずか三十人であるにもかかわらず、一水会は、少なくともメディアの中では、規模の小ささを裏切るような影響力を持っている。

 木村氏は、朝日新聞を含む大新聞や月刊誌に意見記事を書き、「朝まで生テレビ」といった有名な深夜討論番組にも、しばしばゲストとして招かれている。そこで彼は右翼運動に関してだけでなく、対イラク戦争から国連改革まで、幅広い国際問題について討論している。

 他の右翼団体と同様に、木村氏や一水会の仲間たちは、スピーカーのついた街宣車でちょくちょく町に繰り出し、右翼的なスローガンを叫ぶ。しかし、木村氏は機関紙の編集や、ウェブサイトの更新にも忙しくしている。

 木村氏は、一水会が定期的に左翼と論戦を交えていることを強調し、社会党の議員にも友人がいると公言する。

 一九七二年に結成された一水会は、第一線に立つ新右翼団体と考えられている。警察庁は伝統的な右翼団体が数百ある一方で、一水会のような全国規模の新右翼団体は二十四程度あると見積もっている。木村氏によれば、新右翼団体に所属する活動家は、合計でわずか二百人ほどだという。

 伝統右翼と新右翼を隔てているのは、アメリカの覇権や日米安保条約に対する見方である。

東北文化学院大学の政治学教授(現在は退職)で日本の新右翼運動に関する本の著者である堀幸雄氏に話を聞いた。

「伝統右翼は冷戦構造を受け入れ、親米的で反ソ連だ。しかし、新右翼は冷戦構造自体を受け入れない。そして、アメリカの覇権や日米安保条約に反対している」

木村氏によれば、彼が他国の右翼との国際的な連携作りに奔走しているのは、これまで日本で主要な右翼運動のテーマになってきた様々な歴史問題を解決するためだという。

「我々は、北方領土のような、第二次大戦中に失った領土を取り戻さなくてはならない。戦争終結時に強奪され、現在もロシアの手中にある島々などがそうだ」

 こうした領土問題を解決するための一つの方法は、両国の右翼同士が話し合いを持つことだ、と木村氏はいう。

 他の多くの右翼指導者の例に漏れず、木村氏もまた、戦中日本の残虐さを示す歴史を受け入れることに対しては、かなり疑問を感じている。彼は、日本軍が一九三七年の南京大虐殺で、中国文民を何十万人も殺したということに対して懐疑的である。そして、全ての「従軍慰安婦」が、日本兵の性的奴隷になるよう強いられたことを示す明確な証拠はない、と主張する。

 この問題では他の右翼団体が言っていることと同じように聞こえる木村氏だが、一方で彼は、戦時中に旧日本軍の一員として戦った韓国人や台湾人に対する補償は明確に支持している。

「戦時中は沢山の韓国人や台湾人が日本軍のために戦った。しかし、彼らの尽力は日本政府に認められていない。彼らは認められ、補償を受ける必要がある」と木村氏は語っている。

 一水会が日米安保条約に反対している一方で、木村氏は、日本はアメリカと良い関係を持ち続けていくべきだと思う、と語る。

「米軍は日本から出て行くべきだし、安保条約も破棄されるべきだ。私は、米軍基地なしでアメリカと友好関係をもつことには賛成している」と木村氏はいう。

 多くの右翼団体が、天皇陛下が政府首脳として戦前のような役割に戻ることを望んでいる。一方で、木村氏の意見は正反対である。

「私は、天皇陛下は京都へお帰りになり、日本の文化的な象徴になるべきだと考えている。東京では天皇陛下は政治的なシンボルになりすぎている。京都でなら、日本の伝統文化を世界に発信するため、より積極的な役割を果たすことができるでしょう」と木村氏は語っている。

 木村氏によれば、一水会の活動資金は、寄附や機関紙の購読料など様々な場所から得ているという。木村氏は、数人の暴力団員が、個人的に一水会と「同様の考え方を共有する」ことを認める一方、ヤクザのメンバーからは殆ど一銭ももらっていないと主張する。

 観測筋によると、一水会は他の右翼団体と比べて、組織力では抜きん出ているという。

 前出の堀氏によると、「日本には沢山の新右翼・伝統右翼の団体があるが、十分に組織化されておらず、運営もうまく行っていない。多くの団体が、一人とか二人といった少人数で構成され、離れ島的である。しかし一水会はきちんと専門的に運営され、左翼などとの思想的な論争もオープンにやっている」という。

 ここ数年、日本の世論は右傾化しつつあるとよく言われるが、木村氏は、一水会の現在の会員数は、一九七〇年代のピーク時の数百人には程遠い状態だ、と言及している。

 木村氏によれば、一水会の他のメンバーの大部分は、彼と同年代だという。彼によると、若い世代で一水会のようなハードコアな右翼団体に思い切って飛び込もうとするような人たちは、そう多くはないそうだ。



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